入江ユキはアパレル業界で注目のファッションデザイナー。ところがファッションショーのリハーサル当日、息抜きのつもりで出かけたドライブ中に自動車事故で死んでしまう。突然の事で死んだことに気づかないユキはリハーサル会場へゴーストとなって現れるが、その姿は誰にも見えず声も聞こえない。そこへ天界のガイドが迎えに現れる。「まだ死ねない」という思いに説明を振り切って逃げ出してしまうユキ。雨降る夜の街を彷徨ったユキは、やがて高台にある公園でデザイナーを志す服部光司と出会った。ユキのひとり言に思わず返事をする光司。パワーの強い幽霊は午前零時から三時までの間(霊界タイム)だけ、人の目に見えたり声が聞こえたりするらしい。光司の優しさに触れ、孤独な心に温かさを感じるユキ。だが、そんなふたりをじっと見つめる者がいた。
お洒落で骨太な大人のファンタジー
1989年初演のオリジナルストーリー作品。世界進出を目前に事故で幽霊になってしまったファッションデザイナーと、夢を追いかける美大生の青年のラブストーリー。天界から迎えに来たガイドやかたまり様と呼ばれる地縛霊を巻き込み、物語は息をもつけぬ展開で進行する。『シンデレラ』や『赤い靴』といった童話のファクターを下敷きにした大人のファンタジーとして高い評価を受けた。
- 1990.1.22平成元年度
文化庁芸術祭賞 - 1991.1.25第25回紀伊國屋
演劇賞・個人賞 - 1994.1.20第28回紀伊國屋
演劇賞・団体賞




あの震災で、一瞬にして世の中がひっくり返って数か月。なんだか色々なことが起こりすぎて神経がマヒし、生きているのか死んでいるのかわからないような状態が続きました。ゴーストのようになった私自身を主人公の姿に重ね、いつしか忘れかけていた傷をえぐり取られるような痛みと、ごまかしではない、本当の癒しを同時に与えられた気がしました。
僕はまだ17歳です。毎日同じことのくり返しで、迷ってばかり。心の奥を見つめ「これでいいのか?」と自問自答することがあります。この舞台を観て、心の壁を一枚とり払えたような気がします。同じ毎日でも、葛藤をはき出すことができなくても、ここに自分がいて、独りぼっちじゃない。そう思えただけでも糧になりました。
初めて音楽座の舞台を観ました。日本にもいいものがあるのだな。舶来ミュージカルしか観たことのない私は、素直にそう思いました。帰りみち気がつくと、「翼広げればいい、あとは風にまかせ……」と口ずさんでいました。
- 総指揮/相川レイ子
- 演出/ワームホールプロジェクト
- 脚本/横山由和・ワームホールプロジェクト
- 音楽/八幡茂
- 振付/中川久美・香瑠鼓
- 美術/伊藤雅子
- 衣裳/コシノジュンコ
- ヘアメイク/川村和枝
- 照明/望月太介
- 音響/小幡亨
- 音楽監督/高田浩
- 歌唱指導/桑原英明
- 製作著作/ヒューマンデザイン
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