イントロダクション
「わたしの中の、わたしを見つける」
――“いま”を生きる全ての人に伝えたい、大人のファンタジー
いま、「本当の自分が見つけられない」「自分の気持ちをうまく伝えられない」といった悩みを抱えながら生きている人が増えています。物質的に豊かになるほど、人とのつながりは希薄になっていくのではないでしょうか。
「LOVE OF SEVEN DOLLS 七つの人形の恋物語」に登場する、人形遣いのキャプテン・コック(本名ミシェル・ペエロ)は、幼少期の体験がもとで、誰にも心を開くことができず、関わるあらゆる人を傷つけてしまいます。
しかし、そのコックが魂を込めて彫った七体の人形たちは、自分の居場所を探しあぐねて川に飛び込もうとしていた少女、ムーシュに声をかけます。人形たちと触れ合うことで、ムーシュは心開き、コック自身も、自らの心の奥底にある、深い愛に気づいていくのです。
人は、人によって変わることができる。
二人の心と人形たちに起こるドラマを、“いま”という時代に、大きな不安や痛みを抱えながら生きる、すべての人に伝えたい。そんな願いを、この作品に込めました。
ストーリー
田舎町からやってきた、身寄りもなく、ひとりで生きる少女。彼女にはマレル・ギュイゼックという名前があるにもかかわらず、周囲からはムーシュ(蝿)というあだ名で呼ばれ、蔑まれていた。
とりわけ器量が良いというわけでもなく、貧相な身体をしたムーシュは挫折の連続。結局、落ちぶれた場末のストリップ小屋からも追い出されてしまう。行くあてもなく、生きる気力を失い、川に身投げしようとするムーシュ。
そのとき不意に、赤い髪の人形が彼女を呼び止めた。 ムーシュの前に入れ替わり立ち替わり現れる、魅力的な人形たち。やがて彼女は、死のうとしていたことも忘れ、人形たちとの会話に没頭していく。 そんな様子を人形舞台の裏側でじっと見つめる男がいた。
一座の座長で人形遣いのキャプテン・コックは、自分が操っている人形たちが自分の手を離れて、勝手に動き、言葉を発し、あたかも独自に生きているかのような、不思議な感覚を味わっていた―― その人形遣いの本当の名前は、ミシェル・ペエロ。子供の頃から誰にも愛されたことがなく、優しくされたり親切にされたりしたこともない、天涯孤独の冷酷な男だった。
ムーシュに不思議な魅力を見出したキャプテン・コックは、彼女を一座の仲間に入れることにする。 旅から旅の興行暮らしの中、ムーシュは冷血で残忍なキャプテン・コックを恐れながらも、人形たちとの愛情を日ましに深めてゆく。
一方、そんなムーシュの無垢な心に憎しみを募らせていったキャプテン・コックは、彼女を汚そうと無理矢理に身体を奪い、夜毎に屈辱を与えた。しかし夜が明けると、前にも増して七つの人形たちはムーシュに生きる喜びを与え、彼女との愛をより一層深めていくのであった。
やがてムーシュと人形たちの舞台は大評判を呼び、有名な大劇場で興行できることになる。
Special Interview :香山リカさん
人の心がもつ不思議さや多面性、希望を描いた小説、「七つの人形の恋物語」。心理学の研究には必ずといっていいほど、取り上げられる作品です。大きな不安や悩みをもつ人が増え、人とのつながりが希薄になっている現代に、音楽座ミュージカルは、この作品のメッセージを届けたい、と考えています。そこで今回は、音楽座ミュージカルのパートナーズクラブのメンバーであり、様々なメディアでご活躍されている精神科医の香山リカさんに、「LOVE OF SEVEN DOLLS 七つの人形の恋物語」のこと、音楽座ミュージカルについてお話を伺いました。
香山リカ(Kayama Rika) 精神科医・立教大学現代心理学部映像身体学科教授
1960年7月1日北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒。学生時代より雑誌等に寄稿。その後も臨床経験を生かして、新聞、雑誌で社会批評、文化批評、書評 なども手がけ、現代人の“心の病”について洞察を続けている。専門は精神病理学だが、テレビゲームなどのサブカルチャーにも関心を持つ。
- 【主な著作】
- 「人生の法則―知るだけでココロがラクになる10章」(ベストセラーズ)
- 「しがみつかない死に方―孤独死時代を豊かに生きるヒント」(角川書店)
- 「母親はなぜ生きづらいか」(講談社)
- 「上手に傷つくためのレッスン」(メディアファクトリー)
- 「くらべない幸せ ~誰かに振り回されない生き方~」(大和書房)
- 「勝間さん、努力で幸せになれますか」勝間和代・香山リカ【共著】(朝日新聞出版)
- 「うつで困ったときに開く本」(朝日新聞出版)
- 「悪いのは私じゃない症候群」(ベストセラーズ)
- 「しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール」(幻冬舎新書)
- 「大事なことは先のばしにしなさい」(ビジネス社)
- 「精神科医ミツルの妄想気分」(講談社)
- 「女はみんな「うつ」になる」(中央法規出版)
- 「雅子さまと「新型うつ」」(朝日新聞出版)
【人の複雑さを描いた、小説「七つの人形の恋物語」】
読みはじめは、とても謎めいた、怪しげな印象を受けました。幻想物語かなと思いながらページをめくっていくうちに、最後は“人間の話”だということがわかって、とても複雑な気持ちになりました。“人間”というのは、表面的なところで相手を判断してしまう癖があると思うんです。でも、良く見える人は心もきれいとか、悪い人はずっとそのままだとか、そんな表面的なものじゃないですよね。この作品では、そのことを物語として見せていて、なおかつ人形というモノを介在して表現している。本当に、人間の多面性や複雑さ、多層性を実感させられる物語です。
【心の悩みを抱える人が増えている現代】
仕事や学校にはなんとか行けるけれど、気持ちが沈んで適応できないといった人たちは、増えていると考えていいかもしれません。
従来は、親の仕事を継ぐとか、結婚して子どもを育てるとか、外から決められた“役割”があった。それが良かったとは言えないし、大変なことだったと思います。でも今は、選択の自由が広がると同時に、「誰かの役に立てるだろうか」「社会の中に居場所があるだろうか」といったことを、自分で探していかなきゃいけない。もちろん良い面もあるけれど、疲れたとき、しんどいときには、「私なんか生きている意味ない」と、思ってしまう時代になっているのではないでしょうか?
【心に悩みをもつ人に、演劇が与える効果】
二つあると思います。一つは、物語や役者に感情移入をした場合。作中の人物が逆境を乗り越える姿を観て、自分もに重ね合わせることができる、とい うことがあるんじゃないかと思います。もう一つ大きいのは、テレビを見るのとは違い、大勢の人と時間と空間を共にして、同じものを観て、みんなで同じ気持ちになるということ。そこで、「人の中 でまたやっていけるかも」「私と同じ気持ちになってくれる人もいるかも」という、確認ができるのではないか。物語やステージと自分という関係と、横の繋がりの中での自分という、縦軸と横軸があるのが、劇場という空間なんだと思います。
【音楽座ミュージカル「LOVE OF SEVEN DOLLS 七つの人形の恋物語」への期待】
音楽座ミュージカルは、物語がしっかりしているし、広がりや深さもある。その上、音楽とかダンスとか、そういう要素もきちんと見せてくれる。グローバルでありながら、本当に日本発のオリジナルミュージカルだと感じました。今まで、あまりミュージカルに触れたことがない方に観ていただきたいですね。心に悩みをもつ人が観たとしても、観客同士で心の一体感が感じられる、スケール、大きさを持っているのではないかなと思います。「LOVE OF SEVEN DOLLS 七つの人形の恋物語」は、原作が持っている、怪しさや幻想的な部分を感じさせつつ、説明的にじゃなく音楽やダンスなどを通して、人間の心の複雑さ、多層 性、多様性を、感じさせてくれたら、最高なんじゃないでしょうか。